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爆発抑止システム

爆発の発生直後を感知し、爆発が急激な圧力上昇を起こす前にドライパウダー消火剤を自動で瞬時に放出し、早期抑止するシステム。
ニックネームは「瞬殺ボンバー」。

爆発抑止システムとは

爆発の発生直後を感知し、爆発が急激な圧力上昇を起こす前にドライパウダー消火剤を自動で瞬時に放出し、早期抑止するシステムです。

ファイクは、1983年にこの爆発抑止システムを開発した先駆者です。

爆発抑止システムは爆発を消火剤により抑止するため、エクスプロージョン・ベントによる爆発放散に比較して最大上昇値である爆発抑止圧力(TSP)を低く抑えることができます。

エクスプロージョン・ベント使用時には爆発放散後の火災消火の問題および高温火炎によるダメージを機器が受けてしまう問題が残りますが、爆発抑止システムはどちらの問題も解決し、現状復帰時間の大幅な短縮を可能とします。

また火炎、内容物を外部へ放出しないため、毒性物質への使用と屋内での使用が可能です。

爆発抑止システム用消火剤コンテナ(10L型)    
写真1:爆発抑止システム用消火剤コンテナ(10L型)
映像1:爆発抑止システム・スロー再生
爆発抑止システムによって守られた1立方メートル容器の中でコーンスターチを使った粉じん爆発を起こす。爆発発生後、瞬時に圧力ディテクターが爆発圧力を検出し、爆発抑止システムが作動し爆発を抑止する様子を撮影したもの。白い消火剤が容器内に充満し、火炎が爆発まで成長する前に消されている様子が分かる。

爆発抑止のコンセプト

爆発抑止システムの最大のポイントは、いかに早く爆発を発見し、いかに早く必要な量の消火剤を機器内に放出するかにかかります。

ファイクでは各種のディテクターを使用して爆発の早期感知を試みました。その結果、爆発が発生すると小さな火の玉が急激に風船のように360度放射状にふくらみ、先行して圧力波が発生し、その後から炎が広がっていくことがわかりました。

また爆発は1000分の数秒単位で圧力上昇するため、爆発抑止システムの反応時間が大変重要です。
そのため感知システムはいかに早く圧力の上昇を正確に感知すること、およびディテクターの設置方法などを追及することで超高速な感知システムが開発されました。また、その感知からいかに早く消火剤を放出するかを設計に含めたテーパーネック消火剤コンテナーにラプチャーディスクを組み合わせました。

爆発を感知し、信号がコントロールパネルに送られ、次に強制的にラプチャーディスクを破壊し、あらかじめ消火剤コンテナー内にN2加圧されたドライパウダー消火剤が特殊ノズルから放出されます。この感知から抑止までに必要な時間は、30/1000秒から 70/1000秒です。

これによって、爆発上昇圧力が防護する容器や機器の設計耐圧を超える前に爆発を抑止することが可能となりました。

表1:爆発抑止システム 性能
爆発抑止システム 性能 爆発抑止システムに使用される消火剤 機器容積 雰囲気温度 粉じんの爆発指数(標準値) ガスの燃焼速度 機器接続の配管の径 作動セット圧力 最小セット圧力 標準セット圧力 重炭酸ナトリウムまたはDessikarb TM (サニタリーグレード) 0.5m³〜1000m³ −34℃〜60℃ 25×10²kPa・m/s〜400×10²kPa・m/s ※1 30cm/s~60cm/s 2インチ〜36インチ 3.5kPaG(運転圧力が負圧〜大気圧時) Po+3.5kPaG(運転圧力=Po正圧時) 10.3kPaG(運転圧力が負圧〜大気圧時)

作動圧力とトータル抑制圧力(T.S.P)

一般的に、アクティブシステムの作動圧力として7kPa~10kPaがよく使われます。また通常運転圧力、爆発発生による圧力、消火剤コンテナからの噴出による圧力、そして消火中に上昇する圧力を全て足し合わせた圧力を、Total Suppressed Pressure (トータル抑制圧力。略してT.S.P)と呼びます。

予想T.S.Pは専用のツールによって計算されますが、防護機器の体積や消火剤コンテナ台数、設定作動圧力によって変化します。30~45kPa程度になるケースが多くなります。
当然、機器耐圧はT.S.Pよりも高くなっている必要があります。

表2:TSP爆発抑止圧力(参考値)
爆発抑止システム TSP爆発抑止圧力 機器容積 運転圧力 作動セット圧力 KPaG T SP(Pred) 爆発抑止圧力k PaG 0.5m³〜1000m³ 負圧~大気圧 3.45~10.3 35~40

爆発抑止システムの設置例 – 1    
写真2:爆発抑止システムの設置例 – 1
爆発抑止システムの設置例 - 2    
写真3:爆発抑止システムの設置例 – 2

ファイク爆発抑止システムの特徴

  • ファイク独自の消火剤タンクの形状により、より多くの消火剤を、より短時間で噴射することが可能です。消火にかかる時間が短いほど機器内部の圧力が低く抑えられ、機器への損傷を防ぎやすくなります。
  • 開口部分にはラプチャーディスクが使われています。ラプチャーディスクは内部からの窒素ガス圧により瞬時に開き、消火剤が噴霧されます。
  • ファイク独自の「ゼロ拡散」ノズルにより、消火剤をより広い範囲へ、スピードを損なうことなく拡散させることができます。
  • 通常運転中はノズルの先端がプロセスに突き出さない、「テレスコピック・ノズル」を使うことにより、サニタリープロセスにもお使い頂けます。
  • 再充填作業は現場で行えるため、タンクを送り戻して頂く必要はありません。
  • 爆発抑止システムは、粉じんの封じ込めで標準的な12bar耐圧機器からの爆発放散が難しい場合に最適です。
爆発抑止システムの設置例 – 3    
写真4:爆発抑止システムの設置例 – 3
テレスコピックノズル装着時
爆発発生直後    
写真5:爆発発生直後
消火剤放出による爆発の抑止    
写真6:消火剤放出による爆発の抑止

爆発抑止システムの作動の様子

図:爆発抑止システム作動イメージ
爆発抑止システム作動ステップ 爆発抑止システムが配置された機器内で着火が起こる (time:〜0/1000秒) 着火 ディテクターが機器内で発生した爆発圧力を感知 (time:〜1/1000秒) 感知 コントロールパネルがディテクターの信号を受け消火剤コンテナーに信号を送る (time:〜2/1000秒) 作動 機器内の消火剤が広がって爆発を抑止、 全ての行程が完了するまでの時間はミリ秒範囲 抑止 窒素ガス圧によりラプチャーディスクを破壊し、消火剤を噴射 消火剤噴射

拡散ノズルについて

特許取得済みの「ゼロ抵抗」拡散ノズルにより、消火剤をより遠くへ、より早く拡散させながら噴射することが可能となりました。
この図は噴射から20ミリ秒、40ミリ秒、60ミリ秒後の消火剤の広がり具合を示しています。消火剤がまんべんなく機器内に広がっている様子が分かります。
「ゼロ抵抗」拡散ノズルとノズルカバー(ネオプレン、シリコン)    
写真7:「ゼロ抵抗」拡散ノズルとノズルカバー(ネオプレン、シリコン)

爆発感知と爆発抑止圧力(TOTAL SUPPRESSED PRESSURE)

爆発抑止圧力を低減するためには可能なかぎり早く爆発を感知することが重要です。

ファイクは粉じんが浮遊している条件においても確実に爆発を感知できるよう超高感度のトランスデューサーをディテクターとして使用してます。ディテクターは爆発自体を感知するのではなく爆発に先行して進行する圧力波を感知します。

これら敏速な感知システムと消化剤放出速度の速い消火剤コンテナーにより、最小限の圧力増加だけで爆発抑止を完了します。

システム構成

ディテクター(爆発感知器)

超高速トランスデューサーを使用。他のファイク爆発防護アクティブシステムと共用可。

圧力ディテクター    
写真8:圧力ディテクター
オプティカルディテクター    
写真9:オプティカルディテクター

コントロールパネル

システムのコントロール、回路の監視、停電時のバッテリーバックアップを行う。

消火剤コンテナー

消火剤貯蔵容器および消火剤放出装置。ファイク独自の特殊テーパーネック形状とラプチャーディスクを使用した容器弁により世界最速の消火剤放出ができる。防護容積により取付数量が指定される。
消火剤コンテナーには放出ノズル、ノズルカバー等が含まれる。

表3:消火剤コンテナーの寸法・重量
爆発抑止システム 全消火剤タンク形状 ケミカル・アイソレーション用 9ℓ消化剤コンテナー B B 47.5 82.5 B A C 30ℓ消火剤コンテナー 2.5ℓ消火剤コンテナー A B C 5ℓ消火剤コンテナー B C A 10ℓ消火剤コンテナー B C A 20ℓ消火剤コンテナー B C A B C 50ℓ消火剤コンテナー A
爆発抑止システム 消火剤コンテナーの寸法・重量 消火剤コンテナーの容量 寸法(mm) 取付フランジ 充填時重量(kg) A B C 2.5ℓ 300 130 190 4″ ANSI 300 24 5ℓ 410 84 270 4″ ANSI 300 36 10ℓ 650 84 270 4″ ANSI 300 47 20ℓ 770 140 320 4″ ANSI 300 86 30ℓ 900 140 320 4″ ANSI 300 115 50ℓ 1000 140 480 6″ ANSI 300 144 9ℓ 560 200 ―― ―― 22

爆発抑止システムの設計パラメータ

爆発抑止システム設計に最低限必要な設計パラメータは以下の通りです。
以下のパラメータを使い、必要となる消火剤の量と、消火剤タンクの本数、取り付け位置などが決まります。

  • KG値(ガスの場合)
  • Kst値(粉体の場合)
  • Pmax
  • 機器の詳細な寸法
  • 機器の体積
  • 機器耐圧
  • 運転圧力
  • 最大運転圧力
  • 運転温度
  • 消火剤の種類
  • 消火剤タンクの個数
    • 消火剤タンクの個数を変えると、爆発が起こり、消火剤が噴射された後の最大到達圧力が変化します。一般的には個数が多い方が最大到達圧力が低くなります。そのため、機器耐圧や運転温度によって最適な消火剤タンクの個数が決定されます。
  • 圧力ディテクターの設定圧力
    • 圧力ディテクターの設定圧力は、機器耐圧や最大到達圧力との兼ね合いで適宜決定されます。爆発放散口が併用される場合にはその設定破裂圧力も考慮されます。

 

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