爆発防護 / 爆発防護について

エクスプロージョン・ベント

エクスプロージョン・ベント(爆発放散口)とは、内部で爆発する恐れのある機器、容器、配管に取り付け、可燃性粉じん、可燃性ガスおよび引火性液体のベーパーによる爆発から生じる異常な圧力を外部に放出することによって機器の破損を防止する爆発圧力の放散装置で、あらかじめ設定された破裂圧力において破裂開口します。

各装置や機器のエクスプロージョン・ベントは、特別行政法人の労働安全衛生総合研究所によって作成された爆発圧力放散設備技術指針(ガイドライン)に従って設計されます。

HI-CV-S型 一次側
写真1: HI-CV-S型 一次側
HI-CV-S型 二次側
写真2:HI-CV-S型 二次側
爆発圧力の時間変化
図1:爆発圧力の時間変化

上図は、密閉状態においてエクスプロージョン・ベントを取付けた場合と取付けない場合の、爆発圧力の時間変化を表したものです。

エクスプロージョン・ベントを取付けない機器では、図の点線が示すように最大爆発圧力(Pmax)が機器設計圧力 (Pdes)を越え、機器の破壊につながります。もし同じ機器に適格なエクスプロージョン・ベントを取付けた場合、エクスプロージョン・ベントの作動により、放散圧力(Pred)が機器設計圧力(Pdes)を越えず、機器の破壊がないことがわかります。

特長

  • あらかじめ設定された破裂圧力で確実に作動(パッシブ・セーフティ)
  • ファイク独自のスリットパターンにより、瞬時にフルオープンする設計
  • 複数台の取り付けにより、制限のない放散面積を得ることができる
  • 各機器の運転条件に適合する最適な各種型式ラインナップ
  • アルミ板と異なり、二次災害の原因となる金属破片の飛散が無い
  • 産業安全研究所技術指針、NFPA68、EN(ATEX)に適合
  • 主に屋外にて使用されるため腐食、気象条件に耐える丈夫な設計
  • 爆発消炎ベントと組合せて使用可能

エクスプロージョン・ベントの取付け例

クーリングタワーへの取り付け例
写真3:クーリングタワーへの取り付け例
配管への取付け例
写真4:配管への取付け例
エクスプロージョン・ベントを配管へ取付ける場合、配管径の断面積以上とし、流速や爆発指数に応じて放散口の最大許容間隔を求め、それに従って取付ける。
サイロへの取り付け例
写真5:サイロへの取り付け例
エクスプロージョン・ベントをサイロ等に取付ける場合は、粉体が貯留されない位置に取付けなければならない。従って装置の上部に取付けるのが一般的。
集じん機への取付け例
写真6:集じん機への取付け例
エクスプロージョン・ベントを集じん機に取付ける場合、フィルターの位置を考慮する必要ある。フィルターと完全に重ならない位置に放散口を取り付け可能であれば、フィルターの容積を差し引いて、放散面積の計算が可能となるので放散面積を小さくできる。
ホッパーへの取付け例
写真7:ホッパーへの取付け例

エクスプロージョン・ベントの要求事項

ファイクのエクスプロージョン・ベントは以下の要求事項すべてに適合していますので、安心して使用できます。

産業安全研究所技術指針、NFPA68の最新規格に適合した破裂板式爆発放散口であること
上記の各規格で採用されている爆発放散面積の算出計算式および算出法は、破裂板式爆発放散口であるエクスプロージョン・ベントを使用した場合の実証試験によるデータ分析から作成されている。破裂板式以外の爆発放散口を使用する場合は、各規格規定の方法をそのまま使用することはできず、爆発放散の実証試験を個別に実施して爆発放散効率の減少率を求め、算出計算式、算出法に反映しなくてはならない。現実的にはユーザーがこの作業を実施することは困難なため、メーカーの製造する破裂板式爆発放散口を採用することが必要となる。
あらかじめ設定された破裂圧力で確実に作動すること
掛け金式放散口等は、機構部を持つため、錆び、よごれ等の要因により開口セット圧を恒久的に保持することが難しい。これらの問題を解決するためには、機構部のない破裂板式爆発放散口であるエクスプロージョン・ベントを使用することが必要となる。
瞬時に確実な全開(フルオ-プン)が得られるように開口パターンをコントロールすること
開口パターンがコントロールされていない金属板等の板は使用禁止である。これらのものは、瞬時に全開することができないため、爆発放散に必要な放散面積を得るタイミングが遅れ、爆発放散に失敗するためである。たとえば、アルミニウム板、プラスチック板、ガラス板などが、これに該当する。
カウンターウェイトを使用しないこと
カウンターウェイト式の放散口は過去に多く使用されていた放散装置であるが、多くの事故を経て現在は使用が禁止されている。カウンターウェイトによる慣性質量は放散口の作動速度を大幅に遅らせるため、爆発による圧力上昇に追従することはできない。以下の「可動部の質量制限」項より、カウンターウェイトを使用することは明確に禁止される。 また、スプリングを使用した安全弁等の装置もカウンターウェイト式放散口と同じく急激な圧力上昇に追従することができないため使用すべきでない。
慣性質量に影響されずに動作させるため、可動部の質量制限に適合していること
イナーシャを発生させる慣性質量は放散口の作動速度を大幅に遅らせるため、爆発による圧力上昇に追従することはできない。産業安全研究所技術指針では、放散口はなるべく軽量に作り、単位面積あたりの質量として12.2kg/m2 以下(危険等級St1の粉じんおよびメタン等の燃焼速度の小さいガスの場合は、39kg/m2以下)と規定している。
二次災害の原因となる金属破片などの危険な飛散物がないこと
開口時に金属破片等の硬質で質量のある物質が飛散する場合、大きなエネルギーで飛散するため、強い破壊力を持ち大変危険となる。
使用条件に合致した寿命の長い丈夫な設計であること
強度がない金属で製作された放散口は、屋外に設置された際に、荒天等により破損する恐れがある。
製造ロット毎に破裂試験(開口セット圧チェック)を行うこと
エクスプロージョン・ベントは製造ロット毎に開口セット圧のチェックを実施し、性能を確認することが重要である。
メーカーにより破裂圧力、破裂公差が保証されていること
エクスプロージョン・ベントは製造ロット毎に開口セット圧のチェックを実施することにより性能を確認し、ユーザーにその性能を保証するすることが重要である。
破裂圧力がエクスプロージョン・ベントと成績書に明記されていること
ユーザーは設置されているエクスプロージョン・ベントの開口セット圧を、常に把握できる状態であることが重要である。
破裂試験温度と使用温度との差異による影響が考慮されていること
エクスプロージョン・ベントは材料の強度特性により開口セット圧をコントロールしているため、温度による影響を受ける。この影響を反映した製作が必要である。
爆発放散の実証試験を行っていること
まず初めに機器内で爆発が起き、内部の圧力上昇により放散口が静的作動圧力に達して破裂開口し、その後、火炎が放散される。機器設計耐圧に達する前に圧力と火炎を放散しているので機器を破損から防ぐことが出来る。

実証実験の様子
写真8:実証実験の様子
失敗例(放散扉で代用、その扉が飛散)
写真9:失敗例(放散扉で代用、その扉が飛散)
失敗例(アルミ板で代用、アルミ板は開口せず)
写真10:失敗例(アルミ板で代用、アルミ板は開口せず)
失敗例(パネルで代用、そのパネルが飛散)
写真11:失敗例(パネルで代用、そのパネルが飛散)